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Jp-GU-AGU(幕張)でポスター発表

Jp-GU-AGU(幕張)でポスター発表

By In 学会発表, 活動報告 On 2017-06-20


2017年5月20日~5月25日に幕張で開催された、Jp-GU-AGU Joint Meeting 2017で、ザトウクジラ、マイワシ、サケの回遊履歴の解析についてポスター発表を行いました。この研究は、科学技術振興機構CRESTプロジェクトの支援により進められています。

炭素14は、北(親潮域)で低く、南(黒潮域)で高い値を示します。この顕著な南北勾配を利用することにより、海洋生物の回遊履歴等を推測することができます。

 

発表されたポスター1:

炭素14を用いたクジラ等海棲哺乳類の回遊履歴および生態情報の復元

横山祐典, 宮入陽介, 松田純佳, 松石隆, 永田俊

 

発表されたポスター2:炭素14をトレーサーとしたマイワシの回遊履歴解析

宮入陽介、横山祐典、渡邊千夏子、渡邊良朗、永田俊

 

発表されたポスター3:Radiocarbon value as an indicator of carbon sources during breeding of Japanese chum salmon (Oncorhynchus keta)

Yasuhiko T. Yamaguchi, Shigenori Nobata, Tatsuya Kawakami, Kotaro Shirai, Kentaro Honda, Yosuke Miyairi, Yusuke Yokoyama, Toshi Nagata

 

以下に発表されたポスターの内容を解説します。

発表1:炭素14を用いたクジラ等海棲哺乳類の回遊履歴および生態情報の復元

クジラのヒゲは根元から先へ伸びていく、つまり根元が新しく先が古いため、それを輪切りにして炭素14を測ることで時系列の情報を得ることができるのではないかと仮説を立て、測定を行いました。

その結果、ヒゲの先端の炭素14の値は低く、中間部分は高く、根元部分は低いというデータを得ることができました。

炭素14の値は北(親潮域)で低く、南(黒潮域)で高いので、この分析から、このクジラは親潮域で生まれ、黒潮域で育ち、親潮域に戻ってきたということがわかりました。

 

発表2:炭素14をトレーサーとしたマイワシの回遊履歴解析

この研究では、魚の部位により代謝回転時間が異なることを利用して、部位ごとに炭素14の値を測定することで時系列の情報を得ることができるのではないかという仮説を立て、脳、筋肉、肝臓に分けて測定を行いました。

その結果、脳の炭素14は高く、筋肉は中間値、肝臓は低いというデータを得ることができました。

この結果から、マイワシは黒潮域で生まれ、北上し、親潮前線を突っ切って、親潮域の索餌海域にやってくるということがわかりました。

 

発表3:Radiocarbon value as an indicator of carbon sources during breeding of Japanese chum salmon (Oncorhynchus keta)

この研究では、サケの筋肉と卵の炭素14の値を測定、比較することで、産卵にはどの海域の栄養が重要かを推測することができるのではないかという仮説を立て、分析を行いました。

その結果、卵はベーリング海域の炭素14の値を示し、筋肉は日本近海の炭素14の値を示しました。

この結果から、ベーリング海にいる間に栄養をため込んで卵を生産し、日本近海に帰って来てから自分の体を維持するために栄養を取っている、ということがわかりました。

 

これらの研究は、独立行政法人科学技術振興機構(CREST グラント番号:JPMJCR13A4)の支援を受けております。