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生元素動態分野の概要

生元素とはやや聞きなれない言葉ですが、私たちの身体を含めて、すべての生物の細胞に必ず含まれている炭素、窒素、リン、イオウといった元素のことを指します。 生物は、環境中から生元素(実際にはこれらの元素を含む化合物ですが)を取り込んで自らの身体を作ります。 その一方で、生元素は、代謝老廃物の排出や、捕食やその他の要因で生物が死亡することを通じて、ふたたび環境中に戻っていきます。

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このような生物と環境との間での生元素のやりとりのことを、生物活動を介した生元素の循環と呼びます。 生元素動態分野では、海洋環境中での生元素の循環やその仕組みを解明するために、さまざまな角度から、またさまざまなアプローチを使って先端的な研究を進めています。

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このような研究は、今日、ますます深刻化している地球温暖化や窒素汚染あるいは生物多様性の喪失といった地球環境問題に対して人類が立ち向かううえで不可欠な科学的な理解を深化させることに貢献すると考えています。


生元素動態分野の特色

生元素循環プロセスの研究には、大きく分けて、生物による生元素の利用や、生物間の相互作用(特に食物連鎖)を通しての生元素の代謝過程を解明する生物学的(生化学的・生態学的)な側面と、環境中の有機物や栄養化合物の組成や化学的特性あるいは循環速度を解明する化学的(地球化学的)な側面があります。 本分野では、生物学や化学を背景とする研究者が集まり、それぞれの得意分野を生かしながら、新しい異分野融合的な研究を総合的に進めている点に大きな特色があります。

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さまざまなアプローチ

生元素循環の生物学的あるいは生態学的な側面を明らかにするうえでは、生物代謝速度の測定が有用な手段となります。そこで各種トレーサーを用いた海洋環境中の代謝速度(光合成速度、各種窒素取り込み速度、アミノ酸取り込み速度)や加水分解酵素活性の測定を行っています。またフローサイトメトリーや落射蛍光顕微鏡を用い、生元素循環に関与する微生物間の相互作用(捕食、ウィルス感染)の解析も行っています。さらに、他分野との協力のもとに、ゲノム情報解析手法を使った海洋微生物の有機物代謝特性についての研究も進めています。

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同位体生態学、つまり各種安定同位体や放射性炭素同位体の天然存在比を用いた生元素循環や食物連鎖の解析も、本分野における研究の大きな柱のひとつです。安定同位体比質量分析計や同位体分析のための各種前処理システムの運用を行い、化合物別同位体比や、放射性炭素同位体比を用いた新たな海洋生態系解析技術の開発のための研究を進めています。

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また本分野では有機物や栄養塩類の分析のための最先端の設備を整備し、それらを駆使して、高精度な化学分析を行っています。このような精密分析技術を駆使することで、海洋における溶存有機物の分布や動態についての新しい知見が得られてきています。 特に、海水中の難分解性有機物の組成や起源については解明すべき重要な課題が多く残されていると考えています。


さまざまな場での研究を展開しています

本分野では、さまざまな場を対象とした研究を進めています。 学術研究船「白鳳丸」や「新青丸」による外洋域や沿岸域での観測を実施しているほか、岩手県大槌町にある国際沿岸海洋センターを利用して、大槌湾の生態系変動についての研究もおこなっています。

そのほかに、沖縄の石垣島や西表島でもサンゴ礁における生元素動態に関する研究を進めています。具体的な内容についてはPROJECTページをご覧ください。

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