大地震と津波によるウィルスー細菌系の擾乱

2011年3月11日に起きた大地震と津波は、三陸沿岸生態系に甚大なダメージを与えました。しかし、この震災が、沿岸生態系の物質循環の中で重要な役割を果たす、微生物やウィルスに及ぼした影響についてはまだ十分に明らかにされていませんでした。

生元素動態分野の永田俊教授らの研究グループは、岩手県大槌湾の定期調査で得られた時系列データから、震災の起きた2011年の夏季に、ウィルス数と細菌数の比(VBR)が顕著に低かったことを突き止めました。解析の結果、このVBR異常現象は、堆積物の再懸濁や陸域からの流入によって湾内に負荷された大量の懸濁態粒子が、ウィルスを吸着除去したために生じた可能性が高いと結論づけました。巨大地震は、ミクロ生態系への影響を通じて、大槌湾の栄養塩循環や食物連鎖に大きなインパクトを与えた可能性があります。

この研究は「東北マリンサイエンス拠点形成事業」(文部科学省)などの支援を受けました。

Nagata, T. Yang, Y., Fukuda, H. (2022) Disturbed virus−bacteria dynamics in Otsuchi Bay (Japan) after the mega-earthquake and tsunami in March 2011. Aquatic Microbial Ecology, 88:31-41. https://doi.org/10.3354/ame01984

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