三陸の海はなぜ豊かなのか:生物生産維持機構の一端を解明

東北地方の三陸海域は、生物生産が高く、世界有数の漁場として知られています。本研究では、高い生物生産性が維持されている仕組みを探るために、植物プランクトンに着目しました。植物プランクトンは、食物連鎖の土台として重要です。その植物プランクトンの増殖を支える窒素(栄養塩)がどのようにして供給されるのかを調べたのです。

調査の結果、同海域では、植物プランクトンが利用する窒素の半分近くが硝酸イオンであることがわかりました。このことは、湧昇によって海洋の深い層から供給される窒素が、生物生産の維持のうえで重要であることを示しています。さらに興味深いことに、季節によっては分子状窒素の取り込み(窒素固定)も活発に起きていることがわかりました。窒素固定は、これまで主に低緯度海域(亜熱帯や熱帯)で起こる考えられていましたが、中緯度海域である三陸海域でも、重要な役割を果たしている可能性が示されたのです。この研究を通して、これまで不明の点が多かった、三陸の海の豊かさを維持する仕組みの一端が垣間見えてきました。

この研究は「東北マリンサイエンス拠点形成事業」の助成を受けて実施しました。

 

Shiozaki, T., Tada, Y., Fukuda, H., Furuya, K., and Nagata, T. (2020) Primary production and nitrogen assimilation rates from bay to offshore waters in the Oyashio-Kuroshio-Tsugaru Warm Current interfrontal region of the northwestern north Pacific Ocean. Deep-Sea Research Part 1, https://doi.org/10.1016/j.dsr.2020.103304

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