論文発表:同位体で解く世界最大の魚ジンベエザメの生態の謎

生元素動態分野のアレックス・ワイアット研究員らの論文がEcological Monographs誌に掲載されました。

この研究では、アミノ酸別の窒素同位体比や炭素14同位体比の分析技術を駆使して、謎の多いジンベエザメの生態解明に挑戦しました。同位体は、これまでも魚類の生態の研究で広く使われてきました。しかし、サメのような特殊な代謝経路をもった魚の場合、同位体比の変動の解釈が難しいという問題がありました。そこで、沖縄美ら海水族館で長期飼育されているジンベエザメについて、同位体比の変動と生理状態の関係を詳しく調べました。そこから得られた関係式を使って、天然のジンベエザメの食生態を解析したところ、興味深い事実が明らかになりました。その一つは、ジンベエザメが「草食系」らしいということです。これまでジンベエザメは動物プランクトンや小魚を主に食べていると考えられていたのですが、窒素同位体比の結果からは、これらに加えて植物性の餌も採餌していることがわかったのです。また、同じ沖縄周辺海域にいたジンベエザメであっても、個体によって回遊海域が異なることもわかりました。これらの情報は、絶滅危惧種であるジンベエザメの保全を考えるうえで重要です。また、本研究で開発をした新しい手法は、今後、他のサメや魚類にも応用できるものと期待されます。

この研究はJST CRESTの支援を受けて行われました。

以下のプレスリリース記事もご覧ください。

http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2019/20190116-2.html

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/en/press/z0508_00016.html

画像(ジンベエザメの写真)は沖縄美ら海財団のご提供です。

 

発表論文

Wyatt, A.S.J., R. Matsumoto, Y. Chikaraishi, Y. Miyairi, Y. Yokoyama, K. Sato, N. Ohkouchi, and T. Nagata (2019) Enhancing insights into foraging specialization in the world’s largest fish using a multi-tissue, multi-isotope approach. Ecological Monographs, DOI: 10.1002/ecm.1339

 

 

Cartoon showing whale shark migration maps and diet graphs.

A research team from the University of Tokyo developed a powerful, simple tool to discover the diets, migrations, and conservation needs of whale sharks, the world’s largest fish and an endangered species. Image by Alex Wyatt CC-BY-NC-SA.

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