私の研究:「細菌群集のたどる運命と生態系の炭素循環パターンがどのように関連しているのだろうか?」 – 研究員 高巣裕之
海洋において、植物プランクトンの光合成によって生産される炭素量の約50%にも及ぶ量が、海洋細菌群集の栄養基質として消費されると推定されています。
そのため、この膨大な炭素を消費して増殖した細菌群集のバイオマス(生物量)が、その後どのような運命をたどるのかを明らかにすることは、生態系の炭素循環パターンを知るうえで重要です。
私は、「細菌群集のたどる運命と生態系の炭素循環パターンがどのように関連しているのだろうか?」ということに興味を持っており、主に、(1)細菌の消失(死滅)過程を明らかにする、(2)細菌の死骸に由来する有機物の行方を追跡する、というアプローチから、上記研究課題に取り組んでいます。
最近の研究成果としては、西部北太平洋航海において採取した試料を分析した結果、深海に懸濁している粒子状有機物中には、細菌の死骸に由来する有機物が蓄積している可能性を示唆する結果が得られました。
この結果は、近年注目されている、細菌群集の難分解性有機物生成による海洋への大規模な炭素隔離機構の解明に貢献する重要な成果です。