私の研究: 「全有機体炭素計の操作」‐修士課程 岸波 興
私は、今年 4 月に本研究室に進学しました 修士課程 1 年の岸波 興です。はじめまして。
実のところ、私は学部時代には植物プランクトンを扱った卒業研究に取り組んでおり、本研究に入ってから海洋化学・分析化学の手法を本格的に学ぶ日々を過ごしています。研究室の先輩方の話によると、学部時代に主に生物を扱う研究や生態系を学んできた人が化学的なアプローチに憧れ、本研究室に進学するケースが多いようです。
修士課程において私は、人工海水中で海洋微生物にグルコースなどの易分解性の有機物を唯一の炭素源にして、好気的ないし嫌気的に分解させる実験を計画しています。研究全体の説明についてはここでは触れませんが、以降は研究を進める上で欠かすことのできない手法のうち、現在私が習得中の全有機体炭素計(TOC : Total Organic Carbon analyzer)の取り扱いについて、簡単に説明していきたいと思います。
TOC の大まかな測定原理は、海水サンプル中の溶存態の有機炭素 (DOC : Dissolved Organic Carbon) を触媒の入ったカラム内で680℃ の下、CO2 に酸化し(この手法を高温燃焼酸化法といいます)、赤外線を利用した検出器で生じた CO2 ガス量を測定する、というものです。しかしながらサンプルには無機態炭素も含まれるので、分析前にそれらを除去する必要があります。そこでサンプルに塩酸を添加し酸性条件にし、生じた CO2 ガスを追い出すために曝気処理を施したうえで、測定に移ります。
この実験では海水中の DOC 濃度を測定するわけですが、有機物は身の回りに存在するとともに、私たち人間も多量の有機物からなっていますから、サンプルにとっては汚染源です。コンタミネーションを防ぐために、サンプルや器具の扱いは慎重に行わなければなりません。例えば検量線の作成に用いる標準溶液の作成やサンプルの前処理も、すべて清浄な雰囲気のケース内で行われます。分析装置も非常にデリケートなため、メンテナンスや利用時に丁寧に扱うのを怠れば、たちまち信頼性・再現性のないデータを得ることになります。ここに述べたこと以外にも良いデータを得る工夫がたくさんあり、現在, 私はこれらを誤りなくマスターすべく、TOC の操作を学んでいます。実験室での作業のみならずフィールド調査での採水においても、信頼性・再現性のあるデータを得られるよう、私たちは「作法」とよばれるものを習得すべくトレーニングに励み、そのうえで研究が進んでいくのです。
(M1 岸波)
サンプルは慎重に扱います。
実験機材の一部