環境変化に対する海洋細菌の活発な応答
環境変化に対する海洋細菌の活発な応答
太陽の光が降り注ぐ海洋の表層では植物プランクトンによる有機物生産が、水温やその他の環境条件の季節的な変動に対応して大きく変化します。そのため従属栄養細菌の活性も、有機物量や水温の変化に応じて大きな変動をすることが良く知られています。それに対して、光の届かない深い層(中深層、水深が約200mよりも深い層)の従属栄養細菌は、表層から運ばれてくるわずかな量の有機炭素に依存しながら、一年中、冷たい海水の中で暮らしています。
このような環境中では、従属栄養細菌な活性はあまり大きな変化を示さず、いわば生きるか死ぬかといったかつかつの状態にあるのではないかとも考えられます。本研究では、太平洋の亜寒帯域と亜熱帯域の中層水を用いた培養実験を行い、従属栄養性細菌の活性(ロイシン取り込み速度、呼吸速度)が、有機物の添加や水温の変化に対してどのような応答を示すのかを調べました。
その結果、有機物の添加と水温上昇が、従属栄養性細菌の活性に相乗的な促進効果をもたらすことが示されました。本研究の結果は、気候変動で海洋環境が変化したときに、中層の従属栄養性細菌による有機物無機化の速度(二酸化炭素排出量)がどのように変化するのかを理解するうえで重要です。
(教授:永田、研究員:内宮)
Effects of temperature elevation and glucose addition on prokaryotic production and respiration in the mesopelagic layer of the western North Pacific
- M. Uchimiya, H. Ogawa and T. Nagata
Journal of Oceanography, 72(3), 419-426, 2015; DOI 10.1007/s10872-015-0294-4